原田晃行『ホワイトチョコ/ホワイトレート』

原田晃行『ホワイトチョコ/ホワイトレート』発売ライブをお目当てに、ココナッツディスク吉祥寺店に行ってきた。相変わらず最高のアクト。「誰?」という人が大多数だと思うが(失礼)、今日は原田クン(年上だけど)と、彼が所属するHi, how are you?(ハイハワ)というデュエットの音楽の魅力について紹介したい。

Hi, how are you?


ハイハワは、ギター・ボーカルの原田クンと鍵盤ハーモニカの馬淵さんによるデュエット。2014年に三枚のアルバムを残したが、馬淵さんが就職することになり、その後2015年にカバーアルバムを出して活動を休止。現在、原田クンはソロを中心に活動を行っている。

日曜のサザエさん

小さい頃、一週間で一番楽しかった時間はドラえもんを見ている時だった気がする。それは単にドラえもんが面白かったからだけでなく(それも多少はあるかもしれないが)、金曜の夜という放送時間ゆえであった。学校も終わり、明日から楽しい週末だというワクワク感。それに対して、日曜の夜は何とも憂鬱であった。ハイハワが歌ってきたのは、そんな「終わってしまうこと」への寂しさである。

出口のない日曜日のさみしさ サザエさんがおわる

それでも、時間が過ぎ去ることは止められない。そのことはわかっていながらも、

もっとこのままでいてほしい、なんて 無理なのにね

ときどき自分が不安になるよ
いつまでもこのままでいようよ だいじょーぶ

と歌って、終わらないでいてほしいと願ったりもする。

おわっちゃった夏のハーゲンダッツ

女1、男1の二人組。

借りパクした漫画や延滞した映画、おわっちゃった夏のハーゲンダッツやイーニドがバスから見た景色をうたいます。

Hi, how are you?の公式プロフィール。「おわっちゃったこと」へのノスタルジー。でもそれは、単にあのころはよかったという懐古ではなく、何かをやり残してきた過去への想いである。そのことは、セカンドアルバム『さま〜ぎふと』の先頭曲「NIGHT ON THE PLANET」で

時計を止めて 針をもどして 懐かしい景色の中に
忘れてきた 花ひとひら ゆらめく夏

と歌われることによくあらわれている。「おわっちゃった夏」への想いを乗せて、原田クンは歌い続ける。

馴染めなかったやつを、ぐっとさせたい

正直、ハイハワも原田クンのソロにしても、かっこいいバンドサウンドではないし、流行りの音楽を取り入れた前衛性もない。一般受けもしないだろうし、フェスとかで華やかに音楽を消費できるような人にもあまり理解されないような気がする。でも、まわりの音楽の趣味に合わせられないような人はドはまりするかもしれないなー。その理由はなんでだろうと思っていたら、ツイッターでの原田クンのこのように呟いていた。

学校という空気に馴染めなかった人たちとその思いを意識した音楽であったのだ。チャゲアスの良さをだれも理解してくれなかった自分の中学時代を思い出してしまった。そういえば自分が好きな音楽を共有してくれる人が周りにほとんどいなかったな。だからこそ、自分の好きなものを発信する場としてブログを書き始めたんだけれど。それはたぶん原田クンも同じで、100人いたら99人に理解されなくても1人にわかってもらえればという感じなんだろう。カバーアルバム『Hi,Ppopotamus How are You?』

で、RCサクセションをカバーして

この歌の良さがいつかきっと君にも
わかってもらえるさ

と歌っているのもエモい(使い方あってる?)なあと思ってしまいます。

『ホワイトチョコ/ホワイトレート』

そんなハイハワの活動に一区切りをつけ、原田クンはソロで活動を続けている。そして今回出た新譜が『ホワイトチョコ/ホワイトレート』。

馬淵さんの鍵盤ハーモニカはなくなってしまったが、原田クンのソングライティングは健在。特にラストの「アーモンドクラッシュ」はPV(?)もろとも素晴らしい。

でもやはり、鍵盤ハーモニカのメロディがないことに寂しさを覚えてしまう。今までは当たり前のように存在した馬淵さんの空白を背負いながらの演奏。しかし皮肉にも、原田クン一人になったことでハイハワは完成したんじゃないかな、とも思う。もちろん馬淵さんがいらなかったということでは断じてなく、彼女がいないことで原田クンの「おわっちゃったもの」への想いが体現されているような気がする。今回収録されている「パピコ」という歌でも

ずっとじゃなくていい
今だけでいいから

と歌っているのが印象的だった。彼女を思っての歌ではないのかもしれないけれど。