松屋という地獄

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世界各地の安飯屋を回ってきたが、松屋ほど地獄の様相を呈した飲食店は他にないと思うのである。食券機の使い方がわからないと喚く老人、混んでいるのに荷物で椅子を埋める肉体労働者、高級レストラン並みのサービスを求める淑女、虫すら住みつかない衛生状態、極め付けにくたびれ切ったホワイトカラーの貧乏揺すりで大地な揺れる。客が店員を呼び止めると店全体がピリピリとした緊張感に包まれ、皆が聴き耳を立ててどんなクレームが飛び出すか待ち構える。ごく稀に聴こえる「御馳走様」みたいな普通の言葉がアスファルトに咲いた一輪の花のようでなんだかほっこりしたりしながら、掃き溜めに住う都市生活者たちの人生は続く。