KAITO『青のフラッグ』

青のフラッグ 8 (ジャンプコミックスDIGITAL)

青のフラッグ 8 (ジャンプコミックスDIGITAL)

  • 作者:KAITO
  • 発売日: 2020/06/04
  • メディア: Kindle
 

高校三年生の太一は、ある日クラスメイトの二葉から相談を受ける。それは、太一の幼馴染・トーマへの恋慕の話であった。太一は、二葉とトーマをくっつけるために奔走するなかで、二葉への想いもつのらせていき・・・。親友か恋人か。ただそれだけならよくある青春三角関係物語なのだけれど、トーマにとって太一の存在が親友以上の重みを持ち合わせていることが、事態をややこしくする。三角の矢印が完全な形で循環する彼らの青春は、眩しさとか恥ずかしさとか美しさとかをたっぷりと含んで深まっていく。やっかいな三角関係は、夏祭りでの一件でいったんの完結を見るのだが、トーマに恋心を寄せるクラスの女王・マミの存在が再び物語をドライブさせる。思ったこと感じたことをずズケズケと口にする彼女の雄弁さに触発されてか、やがて太一たちの周囲の人物たちが自分の理想や考えをストレートに語り合うようになる。恋愛とは何か、友達とは何か、人生とは何か。若気の至りといえばそれまでだが、自分の人生に全力でぶつかろうとする高校生たちの眩しさが弾けていく。このあたりから「説教臭い」「台詞が多すぎる」といった批判も増えていった印象ではあるが、この主張の発露こそ『青のフラッグ』の最大の魅力であると主張したい。誤解を恐れずに評すれば、特にマミの台頭以降、この漫画は非常に観念小説的である。より正確に言うのであれば、観念が高校生たちに憑依した青春漫画なのだ。観念の傀儡に陥ることなく、太一・二葉・トーマの青春は完結する。最後の展開には賛否両論もありそうだが、そこまで含めてこの作品のすべてが好きである。