『地球の歩き方』東京編 を買う

 

J01 地球の歩き方 東京 2021~2022

J01 地球の歩き方 東京 2021~2022

  • 発売日: 2020/09/02
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 
自分がほかの人からどのように見られているのか、とても気になる人間だ。そんなの気にしないで自分らしく生きようぜみたいなノリの人は全員とは言わずともたいてい偽善者だと思っている。で、それは領域を少し広げて、自分の住んでいる街や国がどういう風にみられているのか、という思考にも繋がってくる。ついに刊行された『地球の歩き方』東京編は、そういった興味関心を満たしくれる面白い一冊だと思う。
たいていの場合、海外旅行の第一印象はその国に降り立った瞬間ではなく『地球の歩き方』を読んだときに植え付けられる。この国にはこういう場所があって、こういう風なエリア分けがされていて、ここは絶対に訪れないといけない。『地球の歩き方』を読みながらそんなことを考えているときから旅行は始まっていると思う。もちろん、その国や街のすべての内容を網羅できないことは分かっているが、限られた紙面で掲載された場所やトピックには公式感が付与され、掲載されなかった内容は「ディープ」「サブカル」みたいな公式から外れたものとしての印象が深くなる。その意味で、『地球の歩き方』はその国のメインカルチャーを伝える正史みたいな書物だと言えるかもしれない。
そんな「正史」であるが、なるほど海外についてはたくさんの種類が出ているわけだが、我が国である日本についての特集は組まれてこなかった。だから、もし日本版を出すならどういう構成でどんな場所を取り上げようかな、みたいな妄想を一人でため込みながらにやにやする、というのも人生のささやかな楽しみであったりしたのだが、この度公式な「正史」としての東京版刊行は、それはそれは大ニュースなのである。
さっそく近所の本屋でかってざっと読んでみた。まず思ったのは、ガイドブックとしてはあまり実用性がないかなということ。東京の名所を網羅的に取り上げてはいるが、ひとつひとつの内容にそれほど文書量が割けていないので、『散歩の達人』とか『BRUTUS』の方がよっぽど中身があると思う。しかし、この本はもともとそういった実用性を求めて買うようなものではないと思っている。真の価値は、度の街がどれだけの量を取り上げられているのかを確認することにある。つまり、何が東京の顔として扱われているのか、資料というか史料としてチェックする楽しみが、この本の醍醐味なのだ。
まず表紙に注目すると、雷門のイラストが使われている。中身を見ると、最初に取り上げられるエリアは日本橋・銀座・築地周辺。領国や清澄白河、柴又なんかにも紙面が割かれていて、東京東部がメインとして扱割れている感じを受ける。一方で、新宿・渋谷・池袋は思ったよりも言及が少なく、中央線沿線もかろうじて吉祥寺が取り上げられているが、中野高円寺下北沢といった街はほとんど触れられていない。全体的にみて、歴史のある東側はメインカルチャーとして大々的に扱われているが、戦後に栄えた西側はサブカルチャーという位置づけが強くなされているように思えて、とても興味深かった。個人的には、先にふれた高円寺中野や下北沢とか赤羽とか北千住、そういったディープタウンにももっと照準を当ててもかなとおもったが、そのあたりは正史に乗っけずに、先人たちがアップしているブログとかユーチューブとかを見て、知る人ぞ知るスポットみたいな扱いでいるのもありなのかもしれない。