前田司郎「愛が挟み撃ち」

文學界掲載の前田司郎「愛が挟み撃ち」を読んだ。

文學界2017年12月号

文學界2017年12月号

 

「愛の挟み撃ち」ではなく「愛が挟み撃ち」であるところがまず信頼できる。二人の男の愛に板挟みにあう女みたいな学芸会レベルの発想を、それは許さない。確かに登場するのは二人の男と一人の女であるが、そこでは愛はそれぞれの人間の専有物ではない。実存の関わり合いの中にだけ、愛はある。そしてその愛を信じる男と、信じない女の間に生まれた「本物」の愛。破滅が待っている気がする。とにもかくにも、平凡の外側で展開される平凡な物語。もしかしたら、芥川賞