巨大の力

『まだ結婚できない男』最終回を見終えた。前作ほどの面白おかしさはなくなってしまったが、それでもくだらないやり取りに十分楽しませてもらった。ドラマを全作完走できたのはいつ以来であろうか。阿部寛の動作がいちいち面白い。ただ背中を丸めて歩くだけ、ただランニングマシーンで走るだけのシーンで笑いが起こるからずるい。あの巨軀は空間を歪めてしまうパワーがあるのだ。

デカいものは、遠近法を狂わせて風景を破壊する。たとえば街中にウルトラマンが現れたとして、私たちが覚えるファーストインプレッションは恐らく「なんじゃこりゃ」であると思うのだ。あまりにも街並みと調和していない。ある人はその歪さにまぬけさを覚えるだろうし、ある人は景観破壊だと裁判を起こしかねない。ボランティアで害獣駆除に駆けつけてくれた紳士にあまりにも酷い仕打ちだとは思うが、兎にも角にもデカいものは風景に溶け込まないのである。で、そんな不調和な景色を生み出す巨大存在が実際にこの世に存在したりするのをご存知だろうか。もちろんウルトラマンではない。大仏だ。

以前、ミャンマーの巨大仏については記事を書いているが、この国にも沢山の巨大仏が屹立している。有名なのが奈良や鎌倉の大仏であるが、実はやつら、たったの15mとかしかない大仏界の恥さらしである。日本一の高さを誇る牛久の大仏は台座抜きでも100mを誇るのだ。阿保である。そんな金があるなら貧しい人に寄付しろと思ったりもするが…。その他にも全国には15台の巨大仏、巨大観音像(40m以上が基準)が聳えたっているのをあなたはご存知であろうか?そんなこと知らなくても十分楽しい人生は歩めるのだが、どうでもいい知識こそあなたの血肉となる。『晴れた日は巨大仏を見に』はそんな巨大仏たちを所余すことなく堪能する旅行記であり、文章の緩さというか捻くれ方がとても心地よいので一読を。あなたもこれで大仏マニアの仲間入り。

晴れた日は巨大仏を見に (幻冬舎文庫)

晴れた日は巨大仏を見に (幻冬舎文庫)