ホーチミン旅行①

年末にまとまった休みを取れたため、ふと何処かへ旅に出たくなった。いつもは一泊500円とか修行僧のような旅をしてきたので、今回こそは優雅で余裕のある大人な旅にするぞと息巻く。バルセロナでガウディ建築を堪能するのもありだし、台北で激うま中華に舌鼓を打ったり、はたまたトンレサップ湖に浮かぶ水上家屋を訪ねてのんびりしてみるのも一興などと考えていたが、気がつくとベトナムホーチミン行きの往復チケットを押さえていた。2万9千円。特に見たいものはなかったのだが、安いという理由に勝てるものはない。ゴリゴリのバックパッカー向け都市である。今回も貧乏旅行が確定した。

何度目の海外旅行だか分からない程度には出かけてきたので、そういった事情を知っている人からすると、てめえは好きで貧乏旅行してるわけなんだから出発の直前は本当に楽しみでいてもたってもいられないでしょと思われる方もいるかもしれない。とんでもない。大概この手の貧乏旅行なんて「きつい」「汚い」「危険」「紙がない」「クソ暑い」の所謂5Kの苦痛に苛まれることは火を見るよりも明らかであり、普段家の布団でぬくぬくと安寧を貪る人間からすると面倒以上の何物でもないわけだ。出来ることなら飛行機のチケットもパスポートもすっかり放擲して実家の猫と戯れながら悠々自適の年末を過ごしたいと強く願うばかりでる。ではなぜそんな苦痛の巣窟であるような旅なんかにわざわざ出かけるのかと問われると答えに窮する。果たして私は稀代のマゾヒストであると言うのか。そうなのか?まあよく分からないのであるが、何の因果かまたもや旅に出る。

 


12/24

朝の飛行機だったため5時に家を出る。真っ暗。この時期こんな時間から人間が活動してはいけないと思うが残念ながらそんな御託を並べている時間もなければ耳を傾けてくれる人もいない。ただ一人、駅を目指す。空港へと向かう電車の中では、森見登美彦太陽の塔』を読む。氏のような文章で文章を綴りたいといつも思っているのだが成功した試しがない。そういえば僕たちは森見登美彦になれないという記事をちょうど前日に読んだ。森見登美彦の文体に憧れる人は多く、書き出しは意気揚々に氏の猿真似のような文章で始まるのだが、結局そのテンションを保ち続けられるような実力が伴わないため知りすぼみ、10ページもめくれば平々凡々な文体に収束してがっくりというとほほパターンが多いという指摘である。「書き出しだけ森見登美彦症候群」という立派な病名までついているとのこと。あな危なし。若干の自覚症状あり。

さてさて成田空港に到着。前述の通り10度目くらいの海外旅行のなるのでもはやベテランの域さ。ゆえに当然旅のいろはは心得ている。何事にも泰然と臨むこと。少々のことで苛々してはならぬ。何事をも許す大海のように広い心を持たねばならぬ。もちろん割り込みなどあったとしても許す心。手荷物検査で化粧水を没収されても許す心。出国検査の列を割り込まれても許す心。おいおいいったい何回列を抜かすんだ。日本人は列を守る民族ではなかったのか。こいつらぶっ●すとか口の中で転がる罵詈雑言。もちろんベテランなのでそんなことを思ったりするわけがない。当たり前でしょう。余裕。

ようやく乗り込んだ飛行機もストレスフル。格安旅行券であったため期待はしていなかったが、機内はあまりにも狭くリクライニング機能すら施されていない。現代の奴隷船とはよく言ったものでエコノミー症候群一歩手前に陥り危うく命を落とすところであった。格安航空には何度も搭乗しているはずだが、毎度毎度今回が一番辛いと思っている気がする。こうやって目の前の出来事や直近に体験した物事を過剰評価してしまう人間を私が非常に嫌悪していることは界隈でひどく有名であろう。

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ホーチミン到着。現地時間13時54分。入国審査では、ビザ無し入国に必要な帰りの飛行機のeチケットを持っておらずドギマギしたが航空会社の予約画面を見せたら何ともなくパスできた。前に中国を訪れた際も、行きの機内で読んでいた地球の歩き方をよく読んだら「パスポートの残存期間が6ヶ月以上」と入国条件に記載されていることに気がつき青ざめたことがある。しかし、有効期間残り4ヶ月を切っていたパスポートで何事もなく入国できてしまったため、安堵とともに本当にこの国大丈夫なのかと要らぬ心配をしてしまった。審査員個人の裁量に依るところが大きいのだろうが。

空港で両替を済まして路線バスで市内へと向かう。実はホーチミンは2回目なのだが、途中の車窓から眺める景色を見ると「バイクの量減った?」「交通マナー良くなった?」とか感じたりしていたのだが、バスを降りると全くそんなことがない、あの頃から何も変わらぬ酷さであると実感。とにかく歩行者優先という概念がないし、さらに信号も少ないため歩道を横断するにも一苦労。この手の都市はとにかく現地民の跡をつけることが一番確実であるという経験知は有していたので何とか移動することができたが、相変わらずの有様だ。

 

何とかして宿に辿り着く。ホーチミンの旧市街から程近いロケーションのとある日本人宿。チェックインして早々に、「今日はみんなでクリスマスパーティーするからぜひ参加してね」という半ば強制イベント発生。誘ってもらうのは非常にありがたいのだが、いかに自分が「クリスマス」とも「パーティー」とも縁が遠い人間であるかを力説せねばならぬ。とか思っていたが結局参加になりました、はい。この記事を書いている今でもパーティーは続いている気配だが、つまりあまり馴染めずそそくさと退散したということですね、はい。とりあえず、途中で食べたフォーの写真とGoProで撮影した動画を貼って今日は眠りにつこうと思います。明日はメコンデルタに赴く予定です

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