村田沙耶香『変半身』

 

変半身(かわりみ) (単行本)

変半身(かわりみ) (単行本)

 

二作収録。人間の内に潜むどろどろとした何かが共通のテーマだろう。まずは表題作。信仰とは何か。身体はただの入れ物なのか。文化や伝統を相対化した先に残るのは何であろうか。問いが無限に続く。人間とは何か。「満潮」では、潮というより即物的な対象がモチーフになる。共に潮吹きへの願望を抱えた夫婦の話。卑猥な話に映るかもしれないが、夜明けの海で遭遇する老婆たちの描写と、最後風呂場での夫の顛末がとにかく美しい。それにしても、村田沙耶香の世界では、どんな狂気にも必ず理解者が現れる。その点はただただ羨ましい。