2021-01-01から1年間の記事一覧

2021年邦楽マイベスト(シングル)

1. ミツメ / Basic(feat.STUTS) 今年は今まであまり聞いてこなかったポップミュージックを意識的に聴くようにした一年でしたが、結局はずっと前から好きなミツメが一番でした。STUTSとのコラボが功を奏し、サイケデリックさを維持したままポップにまとめられ…

2021年10月3日の日記

起き抜けの体に最大照度の陽光が打ち付けている。枕もとに置かれたスマートフォンを手に取る。9時3分。休日の膨大さに甘えて、即座に起き上がることはなく、布団の中でぬくぬくとしている。YouTubeやTwitterを何周かして、伸びをすると、気が付くと10時。時…

文化力の敗退

五輪閉会式を見た。真っ先に思い出したのは、角川書店創業者・角川源義による「角川文庫発刊に際して」の文章である。 第二次世界大戦の敗北は、軍事力の敗北であった以上に、私たちの若い文化力の敗退であった。私たちの文化が戦争に対して如何(いか)に無…

昭和歌謡ベストソングス30

ミュージック・マガジン 2021年 7月号 ミュージック・マガジン Amazon ミュージックマガジンの特集「昭和歌謡ベスト・ソングス100[1970年代編]」が面白かったため個人でもやってみようという試みである。 対象は昭和の時代にシングルとしてリリースされた…

今泉力哉『街の上で』

愛おしい映画だ。 下北沢の街で繰り広げられるこの物語は、いってみれば大したことは起こらない。若葉竜也演じる男と彼を取り巻く四人の女性が繰り広げる群像劇なのだが、そこでは劇的な演出や会話が徹底的に排除されている。どもり、つっかえ、聞き逃し、聞…

地図に穿つ

これまで訪れてきた場所を余すことなくグーグルマップに登録しようと思っている。ひとりで勝手に進めている極めて個人的なプロジェクトだ。誰に見せるわけでもない。何かに役立つわけでもないだろう。ただ個人的な記憶の外付けハードディスクとして、電子地…

しんにょう(あるいはしんにゅう)

幼いころの記憶に残るしんにょう(あるいはしんにゅう)は辶であったけれど、いまモニターに映し出される「辻」のしんにょう(あるいはしんにゅう)は何度目を凝らしても辶だった。ふたつも点が乗っている。おかしな形に困惑しながら、しかしこれはつい今しがた…

光の粒

微かな温もりをはらみ始めた潮風が自由気ままに荒ぶる二月の砂浜は、どこまで行っても誰もいなくて、いつか見たあの景色に似ている。寄せては返す波のごとく、心に去来する寂しさが心地よくなるころには、生きる意味さえも超えていく。 真っ白な砂浜に横たわ…

よくわからない

あるひ私は一大決心をして文庫本の中にもぐってやった。物語は思ったよりも深さが無くてがっくりしたけれど、横の世界はどこまでも続いていて胸が高鳴る。水中から浮き上がってくる言葉たちを吸って吐いていれば息はいつまでも持つようである。 ずっと泳いで…

撃たれなかった拳銃

「チェーホフがこう言っている。物語の中に拳銃が出てきたら、それは発射されなくてはならない、と」「物語の中に、必然性のない小道具は持ち出すなということだよ」 村上春樹『1Q84』より この言葉に出会って、私は一種の怒りを覚えた。意味があること…

想像力の限度

ずっと自分の中で燻り続けているモチーフがある。極夜の東京。そんなものを想像してみると楽しくて仕方がない。もともと、ceroの「orphans」という曲で歌われる白夜の街という設定がすごく素敵に思っていた。単純な思考であるが、では逆に極夜とはどういった…

踊る理由が街にあふれて

片想い「踊る理由」のライブ映像をYouTubeで見ていたら、こんなコメントを見つけた。 ぞくぞくした。震えた。自分は何で泣いてるんだろう 投稿は1週間前、いいねも返信も一つもついていない。コメント主がどのような思いでこの言葉を残したのかは分からない…

Homecomingsというバンド

Homecomingsが昨年クリスマスに行ったライブ「BLANKET TOWN BLUES」を視聴した。本来であれば会場に赴いて直接お目にかかりたかったライブだが都合がつかず、その後アーカイブ配信をしていたのも知っていたのだがタイミングを逸していて、けっきょく配信最終…

【受賞作予想】第164回芥川龍之介賞

芥川賞候補作全部読む企画第三弾。今回も粒ぞろいでした。さっさと作品ごとの感想に移ります。読了順。 尾崎世界観 「母影」 母影(おもかげ) 作者:尾崎 世界観 発売日: 2021/01/29 メディア: 単行本 クリープハイプは実は食わず嫌いしているバンドの一つだっ…